労働法コラム シイナ社会保険労務士事務所

7.派遣が禁止されている業務とは?・・・・・2024年 4月

6.育児休業とは・・・・・・・・・・・・・・2024年 3月
5.年次有給休暇とは・・・・・・・・・・・・2024年 2月
4.労働保険とは・・・・・・・・・・・・・・2024年 1月
3.社会保険とは・・・・・・・・・・・・・・2023年12月
2.労働者派遣法の歴史(派遣法成立後)・・・2023年11月
1.労働者派遣法の歴史(派遣法成立まで)・・2023年10月

シイナ社会保険労務士事務所


7.派遣が禁止されている業務とは?

日本国内において労働者派遣が認められている業種について、労働者派遣業の歴史について触れた際に『派遣を禁止する業種を列挙』しているとお伝えいたしました。

では、具体的にどの業種が労働者派遣を禁止されているのでしょうか。

 

1.港湾運送業務

 

港湾運送は、船舶への貨物の積み込みや積み下ろし、荷ほどきなどを行う業務です。

これらは船舶の入港具合により業務繁閑の差が大きく、雇用が安定的とは言えまい状態でした。

そのため、港湾運送労働者の雇用安定を目指して成立した『港湾運送法』の中に定める『港湾労働者派遣制度』が現在運用されているため、一般的な労働者派遣は禁止されています。

 

2.建設業務

 

建設業は、実際の建設現場工事が複雑な下請関係の下で中小企業により行われることが多く、雇用が不安定になりがちです。

そのため、『建設労働者の雇用の改善等に関する法律』により下請け労働者との雇用関係の明確化などにより雇用を安定させるための措置が図られているため、労働者派遣が禁止されております。

なお、建設業務とは建設現場に係る業務に限られており、現場で行わない事務的な業務などは派遣が認められております。

 

3.警備業務

 

警備業務は、混雑する場所での人の整理や、盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務です。要人の警護も含まれます。

人の生命や財産を守るための専門性とその危険性により、警備業は『警備業法』により警備会社が警備業務を請負形態で業務を遂行するよう定められているため、労働者派遣が認められておりません。

 

4.医療関連業務

 

医師、看護師、保険師などによる医療に関わる業務です。

医療業務は人の生命に直接かかわり、かつ専門的な知識を持った人たちが連携して業務を遂行する必要があるため、派遣が禁止されております。

なお、紹介予定派遣や育休等による労働者の代替要員の派遣などは認められています。

 

5.士業

 

弁護士、税理士などの士業は、依頼者から直接業務を請負うため、派遣先から指揮命令により業務を行うわけではありませんので、労働者派遣が認められません。

ただし、一部の士業で例外的に派遣が認められています。

 

まとめ

 

労働者派遣ができない業務があるのは、下記の3点に集約されます。

①特別な理由によりその業務に対する法律が定められていること、②危険な職務内容であること、③専門的な知識が必要な職務内容であること

労働者派遣は多くの業種で活用されていますが、労働者派遣ができない業務があると同時に、その中でも例外的に労働者派遣が認められる場合もありますので、派遣が禁止されている業務を行わないよう注意してください。


6.育児休業とは

育児休業は、1歳未満の子を養育することに専念するために法律上認められた休業です。
昨今の少子化に歯止めをかけるためには育児を取り巻く環境の整備が必要とされ、その一つとして育児休業が含まれます。
そのため、ここ数年は育児休業に関する法改正が頻繁に行われております。

育児休業の取得条件は?

育児休業は、『1歳未満の子を養育する』従業員が取得できます。
このため、男女関係なく取得できますし、正社員に限定せずパートやアルバイト従業員も対象です。
ただし、以下の従業員は育児休業の取得ができない場合があります。
・入社後1年未満の従業員
・週の所定労働日数が2日以下の従業員
・有期雇用労働者のうち、子が1歳6ヶ月になる日までに雇用契約が満了することが明らかな従業員

育児休業が取得できる期間は?

育児休業は男女とも『養育する子が満1歳になる前日』まで取得可能で、2回に分けて取得することもできます。
また子の両親ともに育児休業を取得した場合には、『子が満1歳2カ月になる前日』まで延長できる制度があります。
子が保育園に入所できないなど一定の条件を満たした場合に限り、最長で『満2歳の前日』までの育児休業が認められています。
さらには、令和4年10月より子の出生日から8週間までの間で取得可能な出生時育児休業制度が始まっています。

育児休業期間中の給与は?

育児休業期間中は労働ができませんので、一定条件の労働者には雇用保険から育児休業給付金を受け取ることが可能です。
受給できる金額は、おおよそ休業開始前の給与額の50%~67%が目安です。
また、育児休業期間中は申請することにより社会保険料が免除となります。

産休や育児休暇との違いは?

育児休業とは似たような言葉に『産休(産前・産後休業)』や『育児休暇』があります。
『産休(産前・産後休業)』とは、子を出産する従業員の母体保護を目的にした休暇で、女性従業員のみが取得可能です。
『育児休暇』は会社独自に定める育児に関する休暇で、育児休暇の導入自体が会社の自由となっております。


5.年次有給休暇とは

年次有給休暇とは、一般的には『有給休暇』『年休』『有休』などとと呼ばれ、一定の条件を満たした労働者に対して与えられる休暇です。
この休暇は、業種や雇用形態を問わず、すべての労働者に付与されるものと定められています。

年次有給休暇が付与される条件は下記を満たした場合です。
・雇入れ日から6ヶ月間継続して勤務すること
・全労働日の8割以上を出勤していること

年次有給休暇が付与される日数は?

雇入れ日より6カ月間継続勤務すると10日間の年次有給休暇が付与されます。
その後も1年ごとに付与日数が増え、最大で年間20日(勤続年数6年6ヶ月以上)もらえるようになります。


パートやアルバイトも年次有給休暇が付与される?

パートやアルバイトなどの所定労働日数の少ない労働者にも上記の条件を満たせば年次有給休暇が付与されます。
ただし、上記に記載した日数が付与されるわけではなく、所定労働日数を基に比例計算した年次有給休暇の日数となります。

年次有給休暇の時季変更権

年次有給休暇は労働者の権利になりますので、会社が権利の行使を制限することは原則として認められていません。
ただし、有給休暇の取得によって会社が行う事業の正常な運営が妨げられる場合には、会社は別の時期に変更する権利があります。

年次有給休暇の取得義務化とは?

諸外国と比較して、日本は年次有給休暇の取得率が低い水準となっております。
そのため、取得率の向上を目的として2019年4月に法改正が行われ、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、そのうち5日を付与から1年以内に取得させるよう企業に義務が課されるようになりました。
この制度はすでに5日以上の年次有給休暇を取得している労働者には特に影響はありませんが、5日未満の労働者に対しては会社が時季を指定して年次有給休暇を取得させることができるようになっております。
もっとも、会社が一方的に時期を指定できるわけではなく、あらかじめ該当する労働者から希望を聞いたうえで、その希望になるべく沿うように時期を指定する必要があります。

派遣労働者の年次有給休暇について

派遣労働者の使用者は派遣元ですので、年次有給休暇の取得申請先は派遣元になります。
また年次有給休暇の取得時期の指定も派遣元が行います。
しかしながら、年次有給休暇を取得することは派遣先企業にも影響がありますので、実際には年次有給休暇の取得に際して派遣元と派遣先が協力していく必要があります。


4.労働保険とは

前回、『社会保険』と呼ばれる制度について簡単に触れてきました。
今回は、『労働保険』について触れていきたいと思います。

労働保険は、労災保険と雇用保険の総称

労働保険という言葉にはあまりなじみがないかもしれませんが、労災保険と雇用保険の総称で、広く社会保険の一部として認識されています。
社会保険は前回も触れましたように、お互いを助け合う相互扶助の考えに基づく制度です。
労働保険も普段はその恩恵を受けないのですが、いざというときに労働者の生活を支える重要な制度となっています。
では、労働保険に含まれる労災保険と雇用保険とはどのような保険なのでしょうか。

労災保険とは

労災保険はその名の通り、業務に必要な行為によって受けた病気やけがに対して給付を行う保険となります。
病院での治療にかかる費用のほか、通院の費用や治療の間に仕事ができなかったことによる給与所得の補填もあります。
治療にかかる費用は健康保険と違い、自己負担額がありません。
また、業務中に限らず通勤途中での病気やけがも給付の対象です。

雇用保険とは

雇用保険は労働者が失業した場合に給付を行い、再就職の援助や、雇用の安定を目指す保険です。
失業した際の失業給付は雇用保険から支払われますし、全国にあるハローワークでは再就職の援助を行っています。
また、労働者のキャリア形成を目的とした教育訓練を行ったり、会社への助成金制度によって雇用の安定を図ったりもしています。

労働保険に加入するには?

労働保険に加入できる要件ですが、前回の社会保険よりも広い範囲を受け持っています。
まず雇用保険ですが、下記のすべてを満たす方が加入できます。
1.週の所定労働時間が20時間以上の方
2.31日以上にわたり雇用される見込みのある方
労災保険は、パートアルバイトなども含め全員が強制的に労災保険に加入することになるため、特に手続きは必要ありません。
ただし、一部の個人事業主による事業は、労災保険の加入が強制ではなく任意となりますので、労災保険が適用されない可能性があります。
また、法人の代表者など労働者ではない方は原則として労働保険に加入できません。


3.社会保険とは

毎月支払われる給与には、基本給(月給、日給、時給)や通勤手当をはじめとする各種手当などが記載されているかと思います。
同時に公的な支払に対する控除として、所得税や住民税と同時に、健康保険料や介護保険、厚生年金保険料が給与より差し引かれています。
今回は、健康保険や厚生年金といった『社会保険』と呼ばれる制度について簡単に触れていきます。

健康保険は仕事以外での病気・ケガ・出産の保険
健康保険は、大きく『健康保険』と『介護保険』に分けられます。
健康保険とは、労働者又はその被扶養者の疾病、負傷若しくは死亡又は出産のための保険です。
例えば、病院に行く際に健康保険証を提示し治療を受けたとします。その際に病院に行った本人が病院に支払う金額は本来必要な金額のおおよそ3割程度になります。
残りの7割は健康保険からの保険給付という形で、自己負担額が減るようになっています。

介護保険は、介護にかかる費用負担を軽減するための制度となります。
介護保険の給付を受けるには、介護の必要があると認定を受ける必要があります。

厚生年金保険は将来働けなくなった時の所得を補う保険
厚生年金とは老齢、障害又は死亡にの際に、労働者やその遺族に対してその生活を守るための保険です。
必要最小限の保険としては国民年金という制度がありますが、厚生年金はその国民年金に上乗せする形で保険の給付が行われます。

健康保険や厚生年金に加入するには?
これら社会保険に加入するには正社員はもちろん、パートやアルバイトも下記の要件を満たせば加入することになります(中小企業は条件が異なります)。
①1週間の所定労働時間が20時間以上であること
②2か月を超えて雇用継続の見込みがあること
③月の報酬額が88,000円以上であること
④学生でないこと
⑤事業所で社会保険に加入している従業員が101名以上いること(令和6年10月より従業員51名以上の事業所に変更される予定)
⑥介護保険については満40歳以上であること
また、上記の要件は健康保険、厚生年金とも共通です。
そのため一部の例外を除き健康保険だけ加入、または厚生年金だけ加入ということはできません。
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2.労働者派遣法の歴史(派遣法成立後)

派遣の対象拡大と規制緩和
労働者派遣法成立後、人材派遣に対する企業からの需要はどんどん高くなります。
それに応じる形で派遣法も改正が行われ、規制緩和が行われます。
・当初は派遣が可能な業務を限定的に列挙していたものを、逆に派遣を禁止する業務を列挙する形に改める(1999年)
・派遣契約期間の終了時点で合意があれば派遣労働者を派遣先企業に直接雇用できる紹介予定派遣制度の解禁(2000年)
・物の製造業務への派遣が解禁(2004年)

派遣切りの問題を経て派遣労働者の権利保護へ
ところが、2008年に起きたリーマン・ショックによる経済不況で大きな影響を受けます。
経済不況により各企業が経費削減をしていく中で、自社雇用ではない派遣労働者が派遣契約を打ち切られることにより職を失い、社会問題となります。
そのため派遣労働者の雇用安定に関する指針が見直しや労働者派遣法の改正が行われ、これまでの規制緩和とは一線を画し、派遣労働者の権利保護を目的とした規制へと動き始めます。
派遣労働者の保護については、主として以下のようなものが挙げられます。これらの保護規程の内容につきましては別の機会にてお伝えいたします。
・派遣契約の中途での解除の際には、派遣元企業に対して休業等により雇用を維持することを求め、派遣先企業に対しては休業等により生じた派遣元企業の損害を賠償するよう定める(2009年)
・雇用が不安定になりやすい日雇い派遣を一部の職種を除いて原則禁止(2012年)
・継続して3年派遣される派遣労働者の雇用を安定化させる措置の義務化(2015年)
・派遣先企業の正社員と派遣同労者との間での不合理な待遇差の解消するため、同一労働同一賃金の仕組みを導入(2020年)

まとめと派遣法の今後
労働者派遣という制度発足後しばらくは規制緩和により社会的な認知が進み、また雇用形態の一つとして日本社会に浸透しております。
ところが、派遣労働者の権利に関しては法整備が追い付いていない面がありました。
その後の法整備により、派遣労働者が働きやすい環境が整ってきています。
また日本社会は少子高齢化による労働力人口の減少が深刻な問題とされ、近年、働き方改革による労働者が働きやすい環境の必要性が叫ばれています。
そのため、派遣労働者が安心しかつ意欲的に働ける労働環境を整備しようという流れは、今後も継続すると考えております。
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1.労働者派遣法の歴史(派遣法成立まで)

人材派遣とは?
人材派遣とは、人材派遣会社が雇用する従業員を他社(派遣先会社)に派遣し就労する仕組みです。
派遣先会社としては自社で教育しなくても必要なスキルを持つ労働者を人材派遣会社から派遣してもらえるため、必要に応じて人材を活用できるのが魅力です。
近年の日本での人材派遣制度は昭和61年の労働者派遣法(派遣法)の成立により始まります。

派遣法成立前の人材派遣は?
人材派遣のような形式は、労働者供給業という呼称で行われていました。
しかし現在のような法整備がなかったために労働者に対する責任の所在が曖昧であったために供給元による労働者への支配が強くなってしまい、賃金の中間搾取や供給先の労働環境の悪化といったことが問題となったため、昭和22年の職業安定法の成立により労働者供給業は禁止されるに至りました。

派遣のニーズの高まり
ところが昭和50年代に入りますと、日本経済もグローバル化やOA機器をはじめとする技術革新により、各企業内の人材だけでは対応しきれない業務が発生します。
社内で対応できる人材を育成するにも時間がかかり、またその間にも新たな技術が開発されるなどスピーディーな対応必要となるため、専門的な知識と技術を持つ人材の確保が求められました。
そのため、派遣法が成立したのです。

派遣は特例で認められた
しかしながら、以前の労働者供給のような事態になる懸念がありました。
そのため派遣法では以下のような仕組みを設けることで、以前のような問題を発生させないようにしています。
・派遣元の会社に労働者の雇用主としての責任を負わせることとし、派遣元の会社が労働者の雇用や労働条件を管理する。
・労働者が派遣先の会社で受ける指揮命令は派遣契約の内容に基づく範囲に限定することで、過剰な指揮命令を排除する。
ところが、労働者供給を業務として行う禁止する職業安定法は派遣法成立後も現在まで廃止されておりません。
つまり、派遣法は労働者供給の特例として認められている制度として始まりました。
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